ウチのかーちゃんバツイチで再婚。
だからいまのとーちゃん二人目のとーちゃん。
僕がいうのもアレだけどかーちゃん美人だから、離婚したあと言い寄ってくる男それなりにいたようで。
僕と妹ふたり、そんでかーちゃんの4人を食事に招待し、その場でいかに自分が子供好きか、いや子供好きといってもむやみやたらと甘やかしたりはしないよ的アピールをしてくるおっさん多かったなぁ。
月に一回か二回はそーいったイベントが開催されてたけど、毎回男違ってたあたりにかーちゃんの実力を感じるよ。
……かーちゃんに言い寄ってくる男はたくさんいたんだけど、家族の中では「あ、この人が次のとーちゃん!」という大本命が存在してました。
だって僕はその人にはじめてあったとき、まだ両親が離婚するなんてことはつゆほども考えていなかったのに、「あの人がお父さんだったらいいな!」と夕飯食べながら力説したからね。
実の父親が嫌いだったワケじゃないし、男女のいざこざで離婚したとはいえ父親としてはいい父親だったと思うんだけれども、そーいった次元とはまったく別のところでキュンキュンきてしまったわけです。
で、未来のお父さん候補とうちのかーちゃんが着実に関係を深めていっている最中、なんとうちのかーちゃんが盲腸で入院するという一大事が発生!
母子家庭でかーちゃん入院とか、けっこうテンパった事態です。
僕と妹ふたりはさてどうしたものかと。
ご飯とか困るんじゃね?的なさ。
で、周囲のオトナたちがああだこうだ相談し、まあすぐ退院するだろうからとりあえずかーちゃんの友だちの家で1週間くらい預かってもらいなさいよアンタら!みたいなところに落ち着いたのかな、たしか。
ところがまぁご存じの通り超絶マイペースB型全開の僕は「そんなのイヤだ」と。
他人の家で1週間生活するくらいなら、自分でご飯作ってノビノビしてたほうがマシですけどもと。
すげえダダをこねてしまったわけですね。
結局、妹ふたりはかーちゃんの友だちの家に預けられ、僕はひとりで居残り。
ただ、さすがに子供ひとりで1週間はマズいのではないかと、もし何かあったときに誰が責任をとるのかと。
そこでかーちゃんがお父さん候補にお願いして、僕と一週間ばかし共同生活をすることになったわけです。
ところがいざ共同生活はじまると、僕が急に相手のことを意識し過ぎちゃってなんかこう今までにないギクシャク加減になっちゃってですね。
普段はフツーに話ができていたのに、なぜか会話のキャッチボール続かなくなり。
うー、ちょっと居心地わるいなぁ……なんてことを思っていたら、お父さん候補が「映画でも観に行くか」と誘ってくれたのです。
そのときちょうど《インディ・ジョーンズ 最後の聖戦》やってました。
僕はこれをどーしてもみたかったから二つ返事でOKをして、未来のお父さん候補とふたりきりで映画館へいったんですね。
インディ・ジョーンズシリーズ三作目にあたる《最後の聖戦》は、聖杯を巡ってジョーンズ博士とナチスが大混戦を繰り広げ、そして母親の死をきっかけに仲たがいしてしまった父親と息子が、命をかけた冒険の果てに和解するまでを描くすげえいい話なんです。
映画を見終わり、あまりの面白さに大興奮の僕。
そんな僕に「面白かったな!」と声をかけてくれたお父さん候補。
気付いたときには劇中のハリソン・フォードとショーン・コネリーよろしく、すっかり元の距離感を取り戻してました。
かーちゃんの入院がきっかけになったのかどうかは知りませんけど、その後まもなくお父さん候補は本当にお父さんとなり、今にいたるわけです。
そんな我が家の裏事情から19年。
インディ・ジョーンズシリーズの最新作《インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国》を先行上映で観てきました。
ずいぶん規模のデカいに話になってましたが、それもまたいいじゃないですか。
グッとくるシーン多かったよ。
──ちなみに、シリーズ1作目の《レイダース・失われたアーク》は1981年公開。
27年前ですね。
計算してみると、うちのとーちゃんは29歳のときに観たことになるのかな?
29歳のとーちゃん、レイダースみたときにまさかシリーズの三作目をバツイチ女の子供連れて観に行くだなんて思いもよらなかったろうなぁ……としみじみ。
また僕も、シリーズの四作目を観るとき自分が結婚してるなんてみじんも考えなかったね。
だからシリーズ五作目をみるとき、僕が離婚していない保証なんてどこにもないわけです。
うー、人生ってふしぎ!
……19年ぶりのインディ・ジョーンズ、できればとーちゃんと一緒に映画館で観たい。
チケット代は僕がおごる。
ま、別に映画館じゃなくてもいいか。
ビール飲みながら実家のちょぼいテレビでDVD観るのも悪くないね。
親子なんだしさ。