9月21日。
いつどうやって帰ったのかまったくわかんないんだけど、朝目がさめたら宿泊しているホテルのベッドでした。
チェックアウトの時間が迫っていたので急いで準備。
柏崎から長岡まで自転車で行って、そこから新幹線にて輪行……なんてことを考えていたけど、たっぷり体内にとどまっているアルコールの余韻に引きずられ、柏崎駅から輪行帰宅することにしました。
友人に電話して帰京する旨を伝えてから駅に向かい、新幹線を予約。
新幹線で輪行する場合は一番後ろの席、それも3列シート側がベストですよっ。
袋詰めした自転車を担ぎ、駅構内を歩くのはちょっと骨の折れる作業。
つっても自転車、重さ8キロあるかないかなんだけどね。
自転車で36時間30分かけて移動した東京−柏崎も、電車を使えばわずか2時間ちょっとのお手軽旅。
そうか、日帰りでカニを食べにいくとか十分可能なんだよなあ……。
思いのほか近いよね、日本海は。
新幹線に乗って駅弁食ったり車内誌に掲載されていた伊集院静さんのエッセーを20回くらい読み返したりしているうちに、ほんとあっという間に東京駅到着。
……せっかくだし、ここから家までは自転車で帰るか。
東京駅前は人通りが多いので組み立て作業、ちょっと恥ずかしい。
15分くらいで完成。
ケータイで地図みて大まかなルートを確認し、事故らないようのんびりじっくり帰ってきました。
遠足は家に帰るまでが遠足っすからね。
月: 2009年9月
柏崎。
9月20日。
柏崎に帰省した友人と合流。
あれこれ見どころを案内してもらいました。



店のおばちゃんが「カニを食べなさい、カニを!」と試食をすすめてくる。
もちろん遠慮なく頂く。
旨い。
一通り市場を巡ったあと、ピンときたお店でカニを購入。

友人とふたり、しばし無言でカニと格闘。
倦怠期のカップルでも安心して楽しめるデートだよなあ、これ。
ちなみにね、一応カニを食べるための食堂っぽいところがあるんだけど、いかんせん客が多すぎて全然机とイスが足りないのわけですよ。

で、多くの人が公園の芝生でカニを食ってる。
最初のうちは別になんとも思わなかったんだけど、よく考えるとすげえ不思議な光景じゃないっすか。
芝生に座って老若男女が無言でカニをイートイン。
うーん、日本は広い!

カニを食ったあとは、同施設内のフードコートでお寿司を。これで1500円。あなどってたけどかなりハイグレードな旨さ!
とどめに男ふたりで日本海を眺めながらソフトクリーム。
もうわけわからん。
かにや横町のあとは友人のお姉さん宅を軽く訪問し、オススメの立ち寄り湯情報をゲット。
笹倉温泉は「美人の湯」として知られ、敏感肌のひとに喜ばれる泉質なんだとか。
風呂上がりの牛乳はお約束コンテンツ。
柏崎方面に戻り、夕暮れの海水浴場にて男子二名
「おぉっ、デカい波きたっ」
「やばいっ、雪駄が濡れたっ!」
など大はしゃぎ。
ゲイ濃度95パーセントくらいの空気感を醸し出しているけど、友人はイケメンなのでむしろ誇らしいくらいですわよ、おほほ。
自力で新潟に来た記念に、地上ギリギリの所に足跡を刻んでみる。
日没後、友人宅におじゃましてご両親とご対面し、すげえ緊張しながらもお父さまオススメの居酒屋に連れて行ってもらう。




たくさん食べて飲んで、旅の思い出などを語り、んじゃまあせっかくですからと2次会は怪しさ満点のフィリピンパブへいき、調子に乗ってテキーラ1本空けて、3次会のお店で何度かリバースし、ハッと気がついたらホテルで寝てました。
柏崎、またいきたいわあ。
でも次は電車かなっ。
達成。
19日は朝6時起床。
峠でパンクするとかいきなり脱輪するとか、そんな感じのイヤな夢を3本立てくらいで見た気がするけどあまり覚えていない。
朝っぱらからひとっ風呂浴びて入念にストレッチ。
前日の疲れはほとんど残っておらず、筋肉痛も皆無。
もちろんケツも余裕だ。
荷物をまとめ、7時30分ごろ宿を出発。
ゴールの青海川駅まで、あと120キロくらい走らなくてはならない。
距離的には大したことないんだけど、今日は山岳コースが多いからね。
しかも朝イチ初っぱなで三国峠を越える必要がある。
なので昨日走ってきた道を1.3キロ戻り、ローソンで買い物して装備を整えた。
ついでに朝食も摂取。
ようやく腹が満たされた。
ローソン駐車場から赤谷湖を見下ろす。
ハイドレーションパックに水分をチャージし、万が一のためのカロリーメイトとソイジョイを買い込み、8時ジャストに三国峠アタック開始!
ダラダラ続く上り坂を淡々と進み、新三国大橋に到達。
三国峠は最高点までにカーブが55個あり、カーブごとにこのような看板が設置されている。
カーブ55個。
心が折れそうになるわあ。
マンガみたいな上りが延々続く。
が、なんだろ、想像していたよりもずっとラク……かも。
サイコンの速度計が時速10キロ台を下回ることもないし、フロントギアもアウターだけで前進できている。
体感的には山中湖いったときのほうがはるかにツラい。
あっという間に標高800メートル地点を突破。
カーブも28個、つまり半分終了。
すげえハイペースだ!
三国峠がヌルいのか、それとも自転車購入してからの1ヶ月で脚力アップしたのかは不明だけど、結局フロントのインナーギア未使用のまま、9時10分に「カーブ55/55」の看板が目に飛び込んできた。
おぉぉぉぉぉぉ、上りきったぜ!
国境の長いトンネルを抜けると……
そこは雪国、湯沢町なう!
すんげえ下り坂を一気に走り抜け、苗場プリンスホテルを通過。
そして寒い!
お天気イマイチだし、下り坂で体温奪われるし、大体この時期の山岳コースでは指までしっかりカバーするグローブ推奨であるにもかかわらず、僕のはういーっしゅな指切りタイプなので、手がかじかんでブレーキ握るのもツラい感じ
ただ空を見るとものすごいはやさで雲が流れていて、雰囲気的には1時間もすると青空が広がりそうだ。
まあここで無理してもしょうがないし、近場にあった日帰り温泉でちょっとだけ休憩。
冷え切った身体を温め、5分100円のマッサージチェアにて連コイン。
朝イチのローソンで仕入れたカロリーメイトを摂取してダラダラ1時間ほど過ごしているうちに、案の定天気よくなってきたじゃないか!
再び自転車にまたがり、そこから越後湯沢駅までノンストップ。
サイコンの速度計、未知の時速60キロ台に迫る勢いで生命の危機を感じたせいか、なぜか下り坂の途中でフル勃起。
というか、ダウンヒルは大体いつもフル勃起。
自転車漕いでフル勃起……殺し屋イチかよ。
越後湯沢駅を華麗にスルーして走り続け、砂押の交差点で長くお世話になった国道17号線とお別れ。
左折して大沢スキー場方面に向かうと、いきなり出現する坂というか壁。
これは……無理だろ……。
ペダルを踏みしめてもなかなか自転車は前に進まず。
三国峠では未使用だったフロントのインナーギア、ここでようやく大活躍!
どうにかこうにかして峠を越え、全長3キロ近くある大沢山トンネルをビビりながら抜けると十日町市。
ふと気がつくと、川の流れが昨日とは逆。
そうだよなあ、山、たくさん超えたもんなあ……。
十日町で食事をとるためラーメン屋へ。
すさまじい盛りっぷりだけど、疲労のためほとんどノドを通らず。
標識に「柏崎」の文字が!
64マリオの雪だるまステージみたいなところかな?
信濃川を越えてから
再び山道。
本日のグルメ大賞ドリンク部門はアンバサホワイトウオーター。
クマ、目撃されているそうです。
ちょっと怖い。
そしていよいよ柏崎市に到着!
ミネラルウオーターを買うため、酒屋に立ち寄ったんだけど、あいにく2リットルサイズのデカいヤツしか置いてなかった。
店のおばちゃんが「少し先にローソンあるからそこで買いなさい」とアドバイスしてくれ、素直に従った結果、10キロ以上走ってようやくローソンに到達。
んもう。
しかし行けども行けども、まったく海が見えてこない。
視界に入ってくるのは稲刈り直前の黄金色に染まった田んぼばかり。
潮の香りもなく、もみ殻の焼ける秋のにおいだけが漂っている。
ひょっとして道間違えたかなあ……と不安になるものの、地図を取り出して確認する元気もなく、ただひたすらペダルをくるくる回す。
「この坂を越えたら、海が見える」
上り坂が登場するたびに繰り返しそのフレーズをつぶやき続け、期待しては裏切られ、裏切られてもまた期待して坂を上り、いよいよダンシング(立ち漕ぎ)する気力もなくなったそのとき、坂の頂点から……海が見える!
まごう事なき日本海!
とりあえず最寄りの海水浴場へ。
どっかんどっかんアドレナリンがわき出てくる。
ウソのようにペダルが軽い。
近い! ゴールは近い!
17時30分、青海川駅に到着。
家を出発して約37時間20分。
2日間の総走行距離は331.76キロ
感慨無量にもほどがある。
泣きたい気分なんだけど、疲れすぎてて涙出てこない。
ホームのすぐ下は海、海、海!
僕のほかにもうひとり、「ザ・鉄道ヲタク」といった風体のお兄さんがいて、駅舎や夕日をバシャバシャ撮影しまくっていた。
せっかくだからお願いして僕も写真をとってもらう。
これ、なかなかいい写真でしょ?
世界をデザインしたヤツのセンス、スゴすぎるぜ。
太陽が完全に沈み、ジワジワと日本海に闇が広がってきたので、自転車をバラして袋詰め。
18時30分の電車に乗り、柏崎で下車して駅前のビジホにチェックイン!
シャワーで汗を流し、商店街の居酒屋でひとり祝杯。
こんなうまいビール、飲んだことねえよ。
刺身の盛り合わせを食べ、まあせっかくだからと柏崎の日本酒『銀の翼』をいただいたところ、わずか1合でKO。
そのままホテルに帰り、あっという間に気絶です。
──人生最後の日に絶対思い出すよね、今日のことは。
せっかくだからGPSで旅の軌跡を記録しておいたよ。