ぐおぉぉぉぉぉ、カラダ痛えよ。
さすがに320キロ走行は体力の限界値を超えていたようだ。
上腕二頭筋と肩周辺の筋肉バキバキすぎて「バンザイ」できないからね、今。
まーしかしそんな痛さも冒険の勲章です。
──書き忘れてましたが白馬の星空メチャメチャ綺麗!
流れ星ビュンビュンだった。
スノボとか久しぶりにいきてえなあ。
日: 2009年11月10日
文豪。
──昨日の続き。
お風呂入ってビール飲んでさあ寝ますかとホテルのベッドに倒れ込んだのが9日の0時ジャスト。
……しかしまったく眠れない。
極寒ダウンヒルやスノーシェッドでのトラブルで生命の危機を感じたため脳内の変なスイッチ入ってしまったのか、目と脳がさえまくっている。
さあこまった。
明日は始発で帰京し、お嫁さんの原稿持って護国寺まで自転車漕がなきゃならないのだ。
「速く走れる自転車あれば、締め切りヤバいとき僕が原稿もっていってあげられるし!」
などとご託を並べてお嫁さんをだまくらかし、まんまとロード購入の許可を取り付けた経緯があるため「バイク便頼みなよ」などとは死んでも言い出せない。
寝なきゃ寝なきゃという気持ちがプレッシャーになってさらに目がさえ、結局一睡もできないまま4時50分にセットした目覚ましアラームを聞くこととなった。
仕方なくそのままチェックアウトして糸魚川駅まで徒歩10分。
本来は糸魚川から長岡までいって新幹線に乗るつもりだったけど、駅員さん曰く「直江津までいってほくほく線に乗り換え、終点の越後湯沢で新幹線乗った方が早いよ」だそうで。
乗り換えめんどくさいけどまあいっか、ということで越後湯沢経由で帰ることにしました。
で直江津で電車乗り換えて席に座った瞬間、脳内のスイッチ切れちゃったらしく、一瞬目を閉じてしまったくらいの感覚だったのにハッと気がつくと越後湯沢。
電車ワープ経験するの久しぶりだぜ。
新幹線は輪行定番の最後列3列シートを指定してあったので自転車の置き場に困ることなく快適そのもの。
ホッとしたら猛烈にお腹すいてきた。
よく考えれば昨日から、ご飯らしいご飯といえば富士見峠に至る道の途中で食ったうどんくらい。
あとはウィダーインゼリーとかソイジョイとかカロリーメイトとか、手軽にエネルギージャージできるものしか口にしてないもんなあ……。
弁当を買うために売店がある8号車までいくと「車内販売に出かけてますんであしからず。ちなみに先頭車両側にいるよ」みたいな張り紙がしてある。
戻ってくるのを待つ余裕ないくらい空腹だったため、車内販売のおねえさんを追いかけて新幹線を端から端まで歩き(僕の席が最後尾なんだこれがまた)、ようやくゲットした幕の内『佐渡朱鷺めき弁当』。
お値段1050円。
うまい!
容器にこびりついた食材の切れ端までもをなめ上げるようにして腹に詰め込んだ。
そして足りない!
圧倒的にボリューム不足!
同じ弁当をもう1個、いやもう2個買ってこようかどうか迷ったけど、言うても1050円だからねー。
東京まであっという間だし、ここは我慢すべきポイントだろう。
車内の電光掲示板に流れる「マラソン参加の男性急死」「パラグライダー墜落」などのニュースを見て、スポーツで結構人死ぬんだなあ……と考える間もなく眠りに落ち、気がついたら東京着。
東京駅からちょっと歩いて千代田線の二重橋駅へ。
代々木上原で小田急線に乗り換え、あとは我が家の最寄り駅まで。
輪行袋かついで帰宅したの9時50分。
どうよ、間にあったぜ!
ところがですよ、これちょっと僕は声を大にして喧伝したいんですが、お嫁さんの原稿、まだ終わってなかったんですよね。
糸魚川から始発で帰ってきたのに、肝心の原稿、未完のまま。
さすが恰幅のよさと締め切り破りのレベルだけは昭和の文豪と賞されるだけのことはある。
実に頼もしい。
で、原稿手渡されたの11時半!
あーあーあーあー。
ひょっとしてのんびり朝食とる時間くらいあったんじゃないですかね、糸魚川で。
まあ別にいいんですけどね。
原稿の遅れを自転車で挽回するという、我が家のワークスタイルにトライアスロン的な要素が取り入れられた記念すべき日だよ。
張り切って護国寺まで漕いだけどまあ当然のように12時には間に合わず、腹立たしいことにお嫁さんから「遅いよ」と言われ、こめかみピキピキさせながら帰宅です。
我が家から護国寺まで往復31キロちょい。
昨日の今日だけにちょっとキツかったんですけど、僕の絶倫っぷりを示すことができて何よりです。
新潟。
日曜日。
前回、生命の危機を感じてリタイアした笹子峠にリベンジすべく、早朝3時30分に自宅を出発しました。
八王子、高尾、大垂水峠、相模湖、大月までをハイペースで駆け抜け、いよいよ笹子峠!
やっぱキツい!
だけど奥多摩で地味にレベル上げを行い、おまけにビンディングペダルも装着している今の僕にとってはこんなもの、まるで問題にならねえぜ。
というわけであっさりリベンジ達成。
大垂水峠と笹子峠のツインピークスを制覇し、長いトンネルを抜けて甲府盆地へ。
しかし本当に甲州に通じてるんすね、甲州街道。
当たり前か。
甲府周辺はうわさ通りブドウ畑多い。
寄り道したいけど、到着時間早すぎてまだ営業しておらず。
ちなみにこの時点で9時くらいだったかな。
時間にも体力にもまだまだ余裕がある。
なのでさらに前進し、長野方面を目指す。
事前リサーチによると、我が家から甲府までが大体120キロ、甲府から松本まで100キロ程度だ。
今日の気力と体力なら、松本までは確実にたどり着けるだろう。
細かいことはあとで考えることにしつつ、コンビニで補給を済ませて再スタート。
韮崎あたりまでは順調だったんだけど、さすが盆地というかなんというか、下った分きっちり上ってもらわなあきまへんで的な登坂ルートが出現し、ゲンナリする。
傾斜はゆるいんだけどとにかく長いのよ。
30キロくらいあるのかな、あそこ。
ダラダラダラダラダラダラダラダラ延々と上り基調。
あ〜テトラポットのぼおってええええ〜を100回くらい歌ったけど、まだまだ先は長い雰囲気だ。
心底疲れたので食堂で1時間の休憩をはさみ、店の大将に「君は今、自転車で感性を磨いている最中なんだね」と、当たってんだか当たってないんだかよく分からないことを言われながら腹いっぱいうどんと梅干しを食べた。
1時間のロング休憩が功を奏したのか、その後の走りはかなりスムーズになって、いよいよ長野県に突入。
ロードに乗った3人組みに追い抜かれたので、これ幸いとばかりにピッチをあげて食らいつく。
ひとりで走るより、複数人で走った方が風の抵抗少なくなるので楽なんですよね。
案の定、登坂中とは思えないほどスピードが上がる。
が、だんだん3人のペースについていけなくなり、5キロ程度でちぎられてしまった。
そんなこんなでまたひとり黙々と自転車を漕ぎ、とうとうようやくやっと、富士見峠を制覇!
もう二度といきたない峠アワード2009暫定1位です。
ぎゅわわわわわんとダウンヒルしてたどり着いたのは諏訪湖。
諏訪湖と言えば『たんけんぼくのまち』ですよね。
こないだ久しぶりにテレビでチョーさん見たんだけど、「ごらんのありさまだよ!」って書かれたTシャツ着てて平成を感じたよ。
諏訪湖のファミマであれこれ補給し、支払いSuicaでって言ったら「なんですかそれ?」みたいな顔された。
Suica使えないファミマあるんだ……という新しい発見もまた旅の醍醐味。
にぎやかなストリートを抜け塩尻方面に向かうとハイこれ出てきた再びの登坂ルート!
しかも傾斜キツいんだ。
3回くらい足をつきつつ、なんとかたどり着いた塩尻峠。
キツかったけど距離はそうでもなかった。
ダウンヒル中にサイコンがアラーム鳴らしまくって、何ごとかと思って視線を落とすと「走行距離200キロ超えたよー」のお知らせだった。
おぉ、なんとこんなところで脱200キロ童貞か!
そして塩尻峠からの下り、すんげえ長い。
甲州街道終点から国道19号線に突入してもまだ下り。
そのまま松本市内方面いっても下り基調継続だ。
気持ちいいけどいかんせん交通量が多いのがなんとも。
走行距離220キロを突破した時点で一時停車。
体力にはまだ余裕があり、そしてやる気も十分。
──このまま100キロ先の糸魚川まで行ってしまおうか。
糸魚川つったらこれもう日本海だからね。
1日で世田谷から日本海、スゴくね?
お嫁さんに電話して、日本海までいっていいかどうかを尋ねたら「ふざけんな」と一蹴された。
明日午前中に届けて欲しい原稿あるから、今すぐ電車乗って帰ってこいと。
……いやいや奥さん、ちょっと待ってくださいよ。
ここまで走ってきたのに続きはWEBで!的な尻切れ加減は切ないじゃないですか。
いかせてくださいよ、日本海。
もっともケータイで検索した結果、20時までに糸魚川つけば終電間に合うことが判明していたので、100キロを4時間で走りきれば何の問題もないじゃないかと強引に結論を出す。
それではと勢いに乗って安曇野まで前進。
まだまだ下り基調だし、怖いくらい足回るし、何より気力の充実っぷりがハンパない。
これはいけるね、20時までに日本海!
ところがですよ、ここからが地獄の始まりですよ。
17時過ぎ、日没と同時にスコーンと下がってくるのよね、気温。
もちろんある程度の寒さを想定して装備を整えてきたんだけど、寒さのレベルがケタ違い。
国道148号線に入ると寒さに加えてツラい登坂も復活。
道路標識で「黒部ダム」という文字を見かけたときはマジで死にそうになった。
そりゃ寒いわ。
ガチガチ震えながら木崎湖・青木湖を通過し、スキー場でおなじみの白馬へ。
スキー場でおなじみって。
そりゃ寒いわ。
だけどここから糸魚川まで残り50キロを切っているはず。
そしてこの50キロはずーっと下りだ。
本来ならうれしい。
だけど今はうれしくない。
だって寒いもの。
《ただいまの気温6℃》
という電光掲示板が恨めしい。
下りなので体感温度はさらにヤバい。
寒さで全身がこわばり、足がガクガク震えてるのがよくわかる。
オマケに疲労の蓄積もあり、ビンディングペダルをうまく外せなくなってきた。
コンビニに駆け込んで貼るホッカイロとネックウォーマーを購入、ここで食ったあんまんの旨さは末代まで語り継がれることだろう。
ちなみに時刻は20時30分。
終電、間に合わなかったなあ……。
お嫁さんに電話をかけ、糸魚川の手前50キロ地点で遭難寸前です終電間に合わないから明日の始発で帰ると伝え、なので始発の時間調べてくれないかとお願いしたところどうやら睡眠を邪魔されたことが気に入らなかったらしくすげえキレられた。
しかしそこは平身低頭な姿勢でなんとか乗り切り、極寒のダウンヒルにもなんとか堪え忍び、とうとう到達県境、新潟に突入です!
このあたりはとにかくトンネルが多い。
普段は空気悪いしトラック怖いしでうっとうしいことこの上ないトンネルだけど、いまはもうひたすらありがたい限り。
だって暖かいもの。
また、道路のいたるところにスノーシェッドも設置されている。
スノーシェッド、知ってます?
雪害から道路を守るためのトンネル……みたいな設備なんですけど、通常のトンネルと違って内部にライトついてないんですよね。
側面にスリット入ってるから昼間はそこそこ明るいんだけど、夜間は見事なまでに真っ暗。
たぶんお化け屋敷の中よりも暗い。
そしてなんと、超ロングなスノーシェッド内部で、前方ライトのバッテリーが切れてしまうというリアルで命にかかわるアクシデント発生!
2個装備しているライトが2個ともお亡くなり。
おかしいだろ、このタイミングで!
しかも片一方のライトは出発前に電池交換したばっかりだっつーのに……。
いきなり暗闇の中に放置され、マジで途方にくれる。
暗いし、対向車きたらシャレにならん。
一応ライトつくにはつくんだけど、点灯してものの10秒もしないうちにまた消えてしまう。
だが逆の考え方をすると、とりあえず10秒は持つということだ。
だからライトのスイッチに手をかけ、10秒ごとに消灯したら再点灯、消灯したら再点灯を繰り返して走行。
スピード出ると怖いからもう片方の手はブレーキ握りっぱなし。
ビンディングも外しっぱなし。
とりあえず照明あるエリアにさえたどり着ければ、後方ライトのバッテリーと前方ライトのバッテリーをシャッフルしてなんとか乗り切れるハズだ。
だけど行けども行けどもスノーシェッド途切れない。
ぴちゃり……ぴちゃり……と水がしたたる音聞こえてくるのも怖い。
後で調べてわかったんだけど、糸魚川手前の国道148号スノーシェッド区間、全長6キロもあるんですって。
暗闇の中、10秒ごとに消灯するライト装備して6キロ走る恐怖は、まあ日常ではなかなか味わえないよなあ。
で、ようやくスノーシェッドが途切れ、普通のトンネルに突入したから、内部の一時待避所みたいなところに自転車を寄せ、前後ライトのバッテリーをうまいこと入れ替える。
すぐ横を通過するトラックにクラクション鳴らされまくるがそこは鉄のハートで。
なんとかライトを復活させてダウンヒル再開。
坂を下れば下るほど、気温は反比例で上がっていく。
道路脇に「笹倉温泉」の看板を見つけ、よっしゃゴールは近いぜとさらに前傾をキツくして自転車を加速させる。
高速道路の下を通過し、さらに交差点2つくらい超えたところで視界にコンクリートの防壁が飛び込んできた
そこが国道148号線の終点。
防壁の向う側は、日本海だ。
おぉ本当に着いちゃったよ1日で。
自転車を立てかけ、シューズを脱いで防壁によじ登ると、テトラポッドの先に真っ黒な海が広がっている。
不意に歌をうたいたい気分になって、ヒルクライム時の定番曲であるaikoさんのボーイフレンドを口ずさむ。
あ〜テトラポットのぼおってええええ〜。
……そのままだな。
ちなみに時刻は22時半過ぎ。
予定よりすげえ遅くなってしまった。
まあしかしせっかくの日本海だ、地魚の寿司食ってうまい酒を飲み、場末のスナックで演歌熱唱でもしますかと思ったけど、そうだ忘れてた、明朝10時には帰宅してないとダメなんだったよ。
くっそー。
駅周辺でビジホを探し、宿泊手続してから自転車分解。
部屋で荷物整理(ハイドレーションパックの中身捨てたりとか)を行い、大浴場で1日の疲れを洗い落とす。
仕上げにビールでひとり乾杯して就寝です。
走行距離331.88キロ、走行時間16時間36分(休憩や信号での停車などを含めると19時間半くらい?)、5717キロカロリー消費。
最後まで走って……というか走れてよかったです。
GPSあると楽しみひろがります。
──ちょっと続く。